お前、笑い声がキモいんだよ
皆さん、安倍なつみはご存知だろうか? 知らない人も多いかもしれない。
安倍なつみは元モーニング娘のメンバーで、通称は「なっち」です。やっぱりなっちはかわいいね。別にファンじゃないけど。
で、なっちが、観客を入れている生放送のインタビュー番組に出ていたわけですが、なっちが微笑ましい話をすると、観覧席の客から笑い声が聞こえるのですが、いわゆるモーオタが多く含まれているものですから、笑い屋のようなオバサン笑いではないわけです。
その中に、一人だけ一際大きく、若干遅れ気味に過剰に笑う、極めてキモい笑い声がありました。
うわっ、悪い意味でのヲタクっぽい!
この妙に過剰に笑うキモい笑い声は、なっちが微笑ましい話をするたびに、これ見よがしにされていました。
耳障りなことこのうえありません。
そういえば以前、私がこんな感じのネズミのキャラクターがいるところに好きな女性とデートに行ったとき、ピーターパンを模したアトラクションに乗るために並ぶと、私たちの前は四人組の男女だった。
それなりの女性二人と、野郎二人だ。一人はオタクっぽかった。
問題はオタクっぽくないほうだ。奴は、女性二人に気を遣って話しかけるのだが、女性二人は面白くないのか、なんとか調子を合わせて愛想笑いをする。いまいち盛り上がらない。
オタクっぽくないほうの奴は、女性の興味を引かない話を話しかけては返ってくる困惑の愛想笑いに合わせるようにして「へへっ、へへっ」と、不思議と耳につく、これ見よがしな笑い声を上げる。
この人を自然と不快にさせる笑い声を、並んでいる間中、聞かされるのだ。「へへっ、へへっ、へへへへっ」
私は私と一緒にデートしている女性に「こいつ、ウザくね?」とインテリジェンスを交えながら聞くと、彼女も知的に「さっきから超ウザいよ」と答えた。
このあからさまにこれ見よがしな笑い声もさることながら、この笑い声を上げるときには、必ず顔を上げて周囲を見渡しながら笑うのだ。「へへっ、へへっ、へへへへっ、へへへっ」
たぶん、奴が男とだけで来ていたら、私は自閉症認定をしていただろう。
長時間、並ばされている上に、長時間、この笑い声を聞かされて、とにかく癇に障る笑い方をしているので、とりあえずその男の笑い方を真似してみた。「へへっ、へへへっ、へへへっ」
怒られた、怒られた。もうね、えらいこと怒られた。
私とデートしていた彼女がえらい剣幕で起こるわけですよ。
「気付くに決まってるでしょ!」と前のグループには聞こえないように声を潜めながら怒鳴るわけです。
「気付くって事は自覚してるわけで、鬱陶しいと思うならやめるだろうからいいんじゃない?」
「本人が気付かなくても、女の子が気付くでしょ! もうやめなさい。わかった?」
「はーい」
私は素直なのでやめたんですが、本家本元オリジナルの奴はやめません。「へへっ、へへヘっ、へへっ、へへへっ」
女の子は愛想笑いを返しながら、オタクっぽくないほうの「へへへっ」男は、会話をしようとやたらと話しかけては「へへっ」っています。
ようやくアトラクションの順番が回ってきました。
アトラクションは二人乗りで、私たちは係員に誘導されるがままに乗り込みました。
私は二人乗りであることを活かして、アトラクションを楽しんでいるデート相手の女性に言いました。
「俺、こういうテーマパークって好きじゃないんだ。金だけかかって並ばなきゃいけないしね。でも、君と来るんだったら、何度来てもいいよ。君が来たいというなら、何度でも一緒に来るよ。楽しそうにしている君を見るのが、俺はとても幸せなんだ」
「ぎゃははははははー。ちょっと、ちょっとー」
そのリアクションはどうよ。ひとのベタな口説きに、と思ったら、彼女は別のほうを見ている。私のほうなど見ちゃいない。
ちょうど乗り物の角度が変わって、前の席と斜向かいの位置関係になったのだが、二人乗りの前の席には、キモい笑い方の男とオタクっぽい男の二人が、あからさまにつまらなさそうに乗っていたのだ。
彼女は腹を抱えながら「あんなに必死に女の子に話しかけてたのに、男同士でつまらなそうに。く、苦しい。だめだ、笑える。腹が痛い。ぎゃははははは」と笑っています。
私も、その野郎二人のあまりにもつまらなそうな表情にゲラゲラ笑いました。アトラクション内で声を殺して笑うから余計に苦しいの。
もうね、アトラクションはそっちのけ。
先に女の子が二人乗っちゃったんだ。で、仕方なく取り残された野郎二人で乗ったんだろう。
女の子が二人で先に乗りに行ったときの男の表情が見たかった。
もう、前のグループのそれぞれの心理状態を分析している間に、あれだけ時間をかけて並んで乗ったアトラクションは終わってしまいました。
おそらく彼女も、相当にあの妙に癇に障る笑いにムカツいていたのでしょう。
なっちにしてもディズニーにしても、この不快な笑い男の笑いというのは、笑ったときの笑いが常にキモいわけではないと思うんですよ。いや、そうなのかもしれませんが。
むしろ、この笑いのキモさというか不快さは、どうも「俺は笑っているんだよ」という過剰な自己主張にあるようです。
なっちに存在認識して欲しい。
女の子と遊びに来ている俺を見て欲しい。
そんな過剰なアピールのための不自然な笑いなんですよね。
公開番組の収録であっても、笑い声ぐらいは許されるわけです。絶叫などは退席させられるかもしれませんが、笑いなら許させる、という甘えがあります。
他の人も笑うわけですから、注目を浴びるために自分が目立って笑わなくてはならないとなると、これ見よがしの笑いになっちゃうわけだ。
「ほら、僕、笑ってますよー」的な。これはキモいしウザいしムカツクんだ。
本人は「笑いだから仕方ないでしょ」などと心の中で言い訳を唱えているのだが、実はアピールできているのは「人を自然と不快にさせる笑い方」だけなのだ。「へへっ、へへへっ、へへへっ」