既製品のフェティシズム

  
 とある美女から写メールが送られてきた。
 期待して開けてみると、氷川きよしとWaTの小池徹平が眼鏡をかけたものでした。
 「私の待ち受け」
 この人は、眼鏡男子好きなのです。
 「シャープなインテリ顔が好き」と昔から言ってました。
 ふざけたことにこの人、「私、自分よりも頭の良い人の話を聞くのが凄く好き」とかのたまうのですが、残念ながら私は、この人よりも頭の良い人を見たことがありません。
 昔、世界最長寿だった泉重千代が、好みの女性のタイプについて「年上の人」と答えた冗談と同じ構図です。
  
 私も、その紅白の場面はリアルタイムではないけれど見ているのですが、その待ち受け画面ではウエンツがトリミングで切られていたのが印象的でした。
 で、この腐女子、以前に「メガネ男子」とかいう本を発売前から楽しみにしておりました。
「表紙なんかも、もう最高!」なんて思いつつ、amazonで「絶対に予約しよう」とか思いつつ、なんとなく予約をしないままに発売日になりました。
 で、発売日が来てしまったので住んでいる地方都市の一番大きな書店に行って中をパラ見したところ 「なんじゃこら?」
 表紙と中身が全然違う。らしい。
 表紙は好みのタイプのイケメンのメガネ男子なのに、中身はおぎやはぎだった。
 メガネ男子萌えという、フェティシズムの、深いこだわりがあるわけで、眼鏡をかけてりゃ何でもいいというわけでもないだろうよ、というね。
  
 三津谷葉子というグラビアアイドルがいまして、私は可愛いなぁと思っていたわけですが、ネットでたまたま見かけた画像に度肝を抜かれましてね。
 おかしいなぁ、な〜んかおかしい、違うぞ、これは何かが違う、理由は分かんないけど何かおかしいんだ。
 グラビアアイドルなんてのは、大抵はウェストがくびれてるもんなんですよ。佐藤寛子なんかはくびれすぎて気持ち悪いんだけど、普通は適度にくびれてる。
 しかし、三津谷葉子には、お腹周りにぷっくり肉が余ってるんですよ。有り得ない、本当なら有り得ない。あっちゃいけないんだ、そんなこと。
 スタイルの良さを前提としているはずなのに、それはもう尋常じゃないですよ。くびれてないんだ。
 しかしどーもその時、アタシ、いやぁ〜な予感がしてたんですよ。なんかコレ、けっこう良くない? って。なんか惹かれてるんじゃないか、って。
 アタシもその場では、よせやーいってなもんですよ。そんなことあるはずがないんだ。おかしいんだ。ぷっくりお腹なんて認められてないんだから。
 そんで、どーゆーことなんだろうと、あーでもないこーでもないって考えながら一つの結論に達したんですがね、こりゃやっぱりアタシはお腹周りの肉が好きなんじゃないか? ってね。
  
 それでアタシ、三津谷葉子のスレッドを見に行ったら、「ありゃ樽だ。樽の体形だ」とか書かれていて、そのうち呼称も「葉子たん」から「葉子たる」に変わっていったんですよ。こわいなー。
 そのうちに「葉子」も取れちゃって、単に「樽」と呼ぶ奴まで出てくるもんだからたまらない。なんか、これはこれで可愛くない? みたいに思っちゃってるわけですよ。
 さらには「樽ドル」なんて新語まで出来ちゃって、同好の士はいるもんだねぇ、なんて思ったりしたわけですよ。
  
 ところが、類家さん。ここでは仮にRさんとしておきましょうか。このRさんが、自ら「樽ドル」と名乗り、売り出しちゃった。見てみたらショックでアタシ、その瞬間意識がすぅーっと。
 Rさん、もうね、樽なんてもんじゃないんだ。単なるデブ。単なるブタですわ。こりゃ酷い。
 「お前は単なるデブぢゃねーか!」 アタシは画面に叫びましたよ。
 豚が樽を名乗ってる。こんな不思議なことって、あるんですねぇ。
  
 樽というのは、ぽてっとしたお腹がチャーミングなわけですよ。それをですね、類家明日香みたいな、明らかなデブがね、もうね。
 ぽてっとしたお腹も何も、段状になってるんですよ。三段腹のような形の樽があるんかい?
 明らかな肥満体が「私は樽ドルです」なんていうのは、複数の強盗殺人で死刑囚となった男が「ちょい悪オヤジ」を名乗るようなもんです。ふざけるのも大概にしてもらいたい。
  
 そもそも、「私は樽ドルです」なんという居直り自体が全くいただけない。
 恥ずかしがって「お腹は見ないでー」と隠したがることこそが、樽ドルの醍醐味ではないか。自ら名乗るなんぞ開き直るな、デブが。
  
 この「眼鏡かけてりゃいいだろ」とか「肉がありゃいいんだろ」的な、表面的に投げやりに狙ったフェティシズムなんか、莫迦の学芸会にもなりゃしない。
 私は、眼鏡っ娘萌えという趣向はないわけですが、時東ぁみみたいな、中途半端にメガネを売りにしたアイドルというのも、批判されているんだろうな、と思ったりするのですが、どうなんでしょう? お前ら、メガネさえかけてりゃいいのかよ?
  
 遥か昔、ゲイバーブームがメディアで喧伝されていた頃、男のレポーターが取材先でゲイに「イイオトコね」とか言われながら、キスの嵐に見舞われるという姿をいくつも見ました。明らかにイケメンでもなくても、されてました。
 ゲイバーですので、仕事だから仕方がないとは思うわけですが、それでもあれでは「ゲイは、男であればなんでもいいんかい」と、誤解されるんではないかと、子供心に心配しておりました。