我輩は非コミュである
我輩は非コミュである。友達はいない。
多人数で盛り上がる場というのが、どうにも苦手であり、盛り上がれば盛り上がるほど、居た堪れなくなる。
「うおー」とか腕を伸ばしながら盛り上がっている中央を横目に、一番端っこのほうで「あ、どうも」と腰をかがめながら縮こまっている。
面白くないことはないんだけど面白くはない。
たまに中央部で自分が話題に上がっていても、聞こえるか聞こえないかの位置で、参加しているようで参加していない状態。
何かコメントを求められて、サービス用の笑みを湛えて一言返す。
その一言で何か盛り上がっていても、私には蚊帳の外の話だ。
どうにも多人数というのは居心地が悪い。
私の父親は、知り合い数人と野球の年間チケットを共同購入している。
孫へのプレゼントとして、みんなに配っているのだが、孫の全員が都合が悪くチケットが余ってしまった。
父親から「お前、行かないか」と誘われた。「誰と?」 「俺と」
何故か私は、父親と野球を見に行くことになった。
席は外野スタンド。ライト側だ。
近くには、太鼓を持った奴やらトランペット持った奴らがいる。
旗を振っている奴もいる。
試合が始まったら、みんなで揃って歌を歌って、同じメガホンを持って、同じ振り付けで応援している。
明らかに、私と親父は場違いだ。普通の服で、応援グッズもなければ、歌も知らない。
ここでは静かに野球を「見る」ことが許されていない。なんなんだこの協調圧力は。
しかし我輩は非コミュである。参加できない。
野球を見に来ただけなのに、何なんだこの居た堪れなさは。
ウッズのホームランで、見知らぬもの同士が笑顔でハイタッチをしている。
なんだ君らは。私にまで求めるな。
身を屈める私と親父の頭越しに、私たちの両隣の二人がハイタッチしていた。
どんだけコミュニカティブなんだよ、こいつら。
twitterというのが流行っているらしい。
コミュニケーション能力に欠ける私には、何が面白いのか、さっぱりわからない。
なにしろ、「Friends(友達)」がほとんどいない。
しかも、その数少ない友達が、別の友達とやり取りしているのだけは飛んでくるから、見た限り、みんな分裂症*1のようだ。
それぞれがそれぞれ別の人と話をしていると、完全に話が成り立っていなくて、これが下手に噛み合っていたりすると、アンジャッシュの往年の頃のネタのようだと思った。
私は、twitterのコミュニティの中に入れないので、ちっとも面白くない。その悔しさから、ただ、ヌイッターに引っかかった振りをして、手打ちで「ヌいてすっきりしました!」と書き込んで嫌がらせをするぐらいしかできない。