今話題のレイプコミュニケーションについて

  
 真性ドMの人が最近「ファックコミュニケーション」というものについて突っ込んだ(byシモネタ大王)研究をしています。
http://d.hatena.ne.jp/pal-9999/20070526/p2
http://d.hatena.ne.jp/pal-9999/20070527/p1
 私は上品な人間ですので、他人を罵ったりとかはしないわけですよ。
 冗談であっても、人様を悪く言うことなどはありません。なので全くの異文化の話です。
  
 で、id:pal-9999さんに対して、id:b_say_soさんが関連エントリを書いているんですが。
http://d.hatena.ne.jp/b_say_so/20070528/1180323906
 「女の人でもやる人はやるよ」という話なんですが、やり取りの「例」を読んでみたんですけど、もうね、ぬるいんですわ。温い。
 こんなんちょっとした冗談であって、罵り合いとか罵倒とかでは全くないでしょ。
 そのことを本人に言ったところ、お返答をいただきました。

ファックコミュニケーションてよくわからんけど仲いい同士ではOKだけどそうでないひとにやるとたいへんなことになるよ!コミュニケーションのことなんじゃないんでしょうか。なので体のこと(体系、肉、足の長さ、顔など)に関する冗談というかからかいというかは下手したら致命傷になりますよ。えぇ。仲良くないといわない。

http://fragments.g.hatena.ne.jp/b_say_so/20070529/1180365973

 いや、圧倒的に温いって。ぬるくていいんだけどさ。
 というか、逆に言えば、女の人が「女の人でもやるよ」というのは、この程度の可愛いレベルなのか、という話で、逆に言えば男との温度差がわかるという話かもしれません。
  
 で、「体のことに関する冗談というかからかいというかは下手したら致命傷」というのは確かにその通りの場合がある。
 私がたしか十八歳のときだから物心のつく前のことだ。
 学校の行事のことで二十人ぐらいで役割分担を決めていたときのことだ。一浪で入ってきたために年齢がひとつ上だった山口さんが、開口一番、自分の考えた仕事の割り振りを提案した。
 ところが、その割り振りは、恐ろしく自分に有利なものだった。わかりやすく金額にたとえると「俺は五百円払うから、みんなは五千円づつ出そう」というぐらいに、自分にだけ異常に甘い、驚くべき提案だった。
 これは本気で言っているのか冗談なのかわかりかねる提案だったが、あまりにその自分にだけ甘い提案に、全員が思いっきり突っ込んだ。
 「おい、そりゃいくらなんでもねーだろー」
 「ふざけんなよ。そんなん通るわけないだろ」
 「阿呆か。なんでだよ。自分ばっかりズルいぞ」
 コテコテなまでの全員同時突込みだったわけだが、彼は私の突込みを聞き逃さなかった。
 私の突っ込みは「ちょっと待てよ。冗談は顔だけにしてしてくれよ」
 なんか、昭和生まれのレトロな表現だ。
 山口くんは、真面目な顔をして私に言った。
 「それはどういう意味だ? ちょっと外で話がしたい。出よう」
  
 別に私と山口くんは、それまで仲が悪かったということもない。しかも、山口くんは明らかに私よりも弱そうであり、暴力沙汰の心配はないため、私は露骨に「面倒臭いな」と思いつつも、山口くんに従って廊下に出た。
 山口くんは真顔で私に迫ってきた。
 「どういう意味で言ったんだ」
 「あんな自分勝手な提案で認められるわけないでしょ?」
 「僕が言っているのは提案のことじゃない。僕の顔は冗談みたいなのか!」
 はい? なんですと?
 「そんなの慣用句じゃん。そんなくだらない話ならもういいよ」
 「僕の顔がくだらない話だというのか?」
 山口くん、別にイケメンとかじゃないんですよ。地味な顔をした、オッサンみたいな顔です。十九歳なのに。眼鏡をかけて丸顔で、くたびれたサラリーマンに成長したのび太みたいな顔でした。
 「別に顔の良し悪しの話じゃないだろ。どうでもいいよ」
 私が部屋に戻ろうとすると、山口くんは私の肩に手を掛け、必死に訴えかけてきました。
 「僕は今まで誰にも変な顔だなんて言われたことはない。親にだって変だと言われたことがない。僕は初めて言われた。だから聞いてるんだ。僕の顔は冗談なのか!」
 これ、実際に言われたセリフなんですよ。しかも泣きながら。
 全然イケメンでもないんですよ。どっちかといえば、明らかに女性に受けない顔だし、事実、全く受けなかった。
 私としては自分の置かれた状況があまりにシュールだった。
  
 とりあえず私としては、顔はもう笑っちゃうわけですが、相手はどうやら真剣のようですし、しかも涙ながらに訴えてきてますし、他の友達も遠巻きにやり取りを見てますし、どうして良いのかがわからない。
 今ならば「かわいいよ。山口くん、かわいいよ」とでも言うんでしょうが、多感な性春時代にホモの噂も嫌ですから、私はとりあえず笑いながら困惑するしかなかった。
 「わかったよ。悪かった」
 「いや、ちゃんと発言を撤回しろ」
 とにかくもうチン毛も生えたもうすぐ二十歳の男が号泣しながら「撤回しろ」と言ってくるわけです。
 私も、本当にどうでもいいわけですから、簡単に撤回したわけです。
 「わかったよ。撤回するよ。冗談なのは、顔だけに限らなくていいよ」
 いや、ビックリした。十九歳、泣きながら腕を振り回してきた。私はポカポカと叩かれたわけです。
  
 見ていた友達が止めに入ってきて、山口くんは友達に宥められながらも泣きながら「撤回しろ」というわけです。
 「撤回も何も本気じゃないだろ。撤回ぐらいするよ。するけど、なんなんだよ一体」と言うと、仲裁している友達が聞いてきました。
 「一体どうしたんだよ?」
 「親にも変な顔と言われたことがないんだって」
 「?????」
 シュールです。
 人生、どこにどんな罠が隠されているからわかりません。 
  
 結局なんか、山口くんを宥めてきた友達に「まぁ、でも、やっぱり、顔のこととかを言っちゃったわけだから、謝ってきなよ」という助言を受けまして「そうだね」と言いながら、さすがにわざわざ謝ることはしなかったのですが、確かにこういうことは無いとは言えないわけです。
 だがしかし、私は「体のことに関する冗談というかからかいというかは下手したら致命傷」というよりは、山口くんの精神構造のほうが致命傷のような気がします。
 正直、そういう人間とは業務上の付き合い以外、関係が切れちゃったほうが良いとすら思えます。