女子大生と精液の臭い

  
 郵便局に行く必要があり、散歩ついでに一駅向こうの郵便局まで向かうことにした。
 私の家の近くには、女子大と女子短大があり、運悪くというか、運良く、帰りの時間と合ってしまい、妙齢の女性の集団の中にひとり囲まれて駅まで歩くことになった。
  
 なんというか、みんなオシャレで可愛く見える。
 たぶん、ひとりひとりを個別に見たら、それぞれはそれなりに欠点もあって、まぁまぁ可愛い程度だろうから、敢えて個別に見ることなく、みんな適齢で可愛いねぇ、と満足した状態で囲まれて歩く。
 それでも一応は品定めをしたいわけで、かといって、露骨に品定めをするわけにもいかず、とりあえずは素知らぬ顔をしながら、こっそりチェックするわけです。
  
 なんか基準点が甘くなったのか、不満はあれども、どれもがそれなりに可愛く思えるというか、欠点はあれどもトータル的に可愛い、という女性が多く、ファッションや化粧などで見せ方が上手くなっているからというか、まぁ、どれでも勃つよなぁ、という印象です。
 で、私は悟られないように全く関心もないようなすまし顔で歩きながら、特に可愛いと思った娘のボディラインから裸を想像して歩いていると、妙にあの、いわゆる「イカ臭い」というか、アレの臭いがしてきました。男はみんな知っている精液の臭いです。
 あれ? 射精したか? イっちゃったのか?
 まわりは女子大生ばかりで、どう考えても男は私だけです。常識的に考えるならば、射精したのは私しか有り得ないでしょう。私は慌ててズボンをおろし、トランクスの中を目視と触手でチェックしてみましたが、射精した形跡はありません。
 おかしい。この私を取り囲んでいる女子大生の誰かが射精して精液を臭わせているということが有り得るのか? いや、まさかあるまい。
 しかし、この臭いはまかり間違いなくあの嗅ぎ慣れた精液のものだ。何故だ?
 隣を見ると、顔射された女子大生がそのままの状態で歩いているわけもなく、私は膝まで下ろしたズボンのせいで歩きにくいながらも、何食わぬ顔で歩を進める。
 おそらく女子大生たちも、この臭いは飲んだりして知っているはずだと思われるのだが、別に誰も何も言わない。
 もしかして、私の鼻にだけ精液が入ったのか? などと穿った考えを持ちそうになる。
  
 私はもう、この多数の女子大生に囲まれながら、精液の臭いが充満している状況に耐え切れなくなってきたのだが、どうしようもない。
 とにかく無罪なんだから、疑われるのは嫌だけど、男は私しかいないんだよ! 助けて!
 居た堪れなくなったそのとき、さらに臭いがきつくなってきた。明らかに精液の臭いだ。
 国道沿いの公園に、どんぐりなのか栗なのか、大きな木が数本立っていて、その木一面に花が咲いていた。
 栗の花の臭いだったのだ。
 精液の臭いなのにクリの花だったのだ。
  
 というか、家の近所にも栗の木はあるけど、ここまで精液の臭いと同じ臭いがするのか? 栗の花。
 スペルミンの臭いそのままじゃないか。ここまでのは初めてだ。ビックリした。これは強烈だ。
 女子大生たちは毎日通っているため、この公園の栗の花を知っているから、驚かなかったのだろう。咲き始めの頃は驚いたに違いない。
  
 郵便局の帰り、今度は駅へ向かう女子大生の中に突っ込んでいくコースになる。
 女子大生たちの顔を正面に見ながら歩くわけだが、相変わらず栗の花の臭いは充満している。
 この人たち、すました顔をしているけど精液の臭いを思い出しているんだろうなと思うと勃起した。