本能と種の保存

  
 天皇家に、孫娘の愛子さんが生まれたときに、女系天皇に関する議論が起きて、悠仁さんが生まれて議論は棚上げにされた。
 その議論の中で、男系の主張をする側から、Y染色体が途絶えるという理由が言われてすぐに引っ込んだ。
 男系という決まりごとが徐々に緩やかに固まっていく過程において、Y染色体という理由付けはおろか、意識にすらあがっていたはずがない。知らないんだから。
  
 生物には、遺伝子を残したがる本能があるということになっている。
 遺伝子を残したがる本能があるから今まで脈々と命を繋いできたと言えるし、遺伝子を残したがる本能がない生物は滅んだとも言える。
 しかし、遺伝子という科学的概念が発見される前は、近代以前の日本においては、遺伝子という意味の血脈よりも、お家が大事だという家名を継ぐほうが重要だった。
 それはおそらく、原則的に長子が継いで行く遺産の継続という意味合いもあるのだろうが、どちらかといえば『先祖供養』という鎮魂というか、怨霊対策というか、自分の死後も弔って欲しいとか、そういった「死者の都合」という意味合いが強いのではないかと想像する。
 このあたりはきっと専門家の誰かが指摘しているだろうし、研究もされているんじゃないかと思うわけだが。
  
 「本能」や「利己的遺伝子」に還元して分析すると、なんとなくわかりやすいし楽しいのだが、眉唾感は拭えない。