どっとはらい

  
 NHKの朝の連続ドマラの「どんど晴れ」ですよ。
http://fragments.g.hatena.ne.jp/tomo-moon/20070504/1178281907
 これを読んでいて思い出したんですけどね。
 主人公でヒロインは確かに可愛い。沖縄っぽくない沖縄美人。かなりの正統派。
 それはいい。そのヒロインが確かに「どこまでも真っすぐで聞き分けが良すぎ」る。というか、婚約者のマサキがどうなの?
  
 実は私は見ていない。最初の一週目の一部しか見ていない。
 ヒロインのナツミと婚約者のマサキ。マサキの祖母は老舗旅館の大女将で、母親は既にお亡くなりになっている。
 老舗旅館は、マサキの祖母が大女将で、マサキの叔母が女将をやっていて、叔母は従業員からの信頼も厚いらしい。
 マサキの祖母が倒れて、祖母はマサキに「死んだ母親のために旅館を継いで欲しい」と頼む。マサキは断る。
 後日、マサキがナツミの家に行き、結婚式の日取りの話になったとき、マサキは突然、婚約を破棄し、旅館を継ぐと言い出す。
 いきなりの破局にナツミは泣くも、一緒についていって女将になる、というも断られる。それでもナツミは健気に縋りつく。
  
 もうね、阿呆かと莫迦かと。
 これは率直に言って、キャラ設定とストーリーが破綻しているとしか思えない。
 マサキは、祖母の話と幼い頃に死んだ母親にほだされたのを理由に、婚約を破棄して旅館を継ぐ決意をするのだが、こいつ、死んだほうがいい。
 まず、婚約を破棄するのに、婚約者に事前報告をせずにいきなり相手の親に直接話をする。奇襲だ。これはやられたほうはたまらない。
 確かに言いづらいのはわかるが、言いづらいから言わなくて相手の女性を余計に傷つける、家族の前でいきなりショッキングなことを言い出し泣かせる。自分のことしか考えていない糞男だ。
 そして、祖母に言われて旅館を継ぐもなにも、婚約者を捨てるだけでなく、旅館には、既に従業員から信頼の厚い叔母が女将としているのだ。
 叔母はやる気満々で、叔母が継ぐことに何の問題もない。横からマサキが割って入る正当性がこれっぽっちもない。
 つまりマサキの「旅館を継ぐ」という決断は、周囲に迷惑をかける以外の効果が皆無である。誰も幸せになる選択ではない。旅館を乗っ取るという利己的な目的があるならばともかく。
  
 私は、このマサキというのを、敢えてどうしようもない糞男だという描き方をしているのだと思っていた。
 ところが、脚本家はどうもそうではなかったらしい。
 マサキはナツミを本当に愛しているのだ。愛しているからこそ「女将という大変な仕事に君を就かせたくないんだ」という。
 マサキの母親は、女将の仕事の大変さ故に、若くして死んでしまった。大切なナツミを同じように失うのは避けたいから、泣く泣く別れたのだ。
 なんという美談、、、のつもりなのか? この脚本家は頭がおかしいの?
  
 マサキは一生独身でいるつもりなのか?
 一生独身であるのならば、それこそ旅館の女将は誰がやるのか? 叔母がやるのであれば、マサキが旅館に割り込んでいく理由がない。嫌がらせだけのための行為だ。
 では、誰か別の女性と将来的に結婚するのだろうか? だとするとマサキは、その将来の女将候補の結婚相手は『死んでもいい大切ではない人』と結婚することになる。
 ナツミは大切だから別れたんだけど、君は大切じゃないから結婚したんだよ、ということになる。
 死んでもいいどころか、死んだほうがいいのはマサキではないか。
  
 そもそも、このマサキのやり口というのは、自分が身を引く振りをしながら、ナツミから、自分にとって最良の条件を引き出すためのパフォーマンスにしか見えない。
 ナツミはどうしようもなく莫迦で、ほいほいとその思惑に引っかかっている頭の弱い子にしか見えない。
 しかし、どうも制作側は、そういう演出というか、意図ではないっぽいのだ。
 ただ単純に、キャラ設定とストーリーが破綻しているだけっぽい。
 舞台を旅館の奮闘記にするためだけで、その設定を満たせば、それまでのストーリーは何でもいいやという、酷いやっつけ仕事だと感じた。
  
 なんか、マサキの極悪非道ぶりを書いていて、このエントリを思い出した。
http://fragments.g.hatena.ne.jp/b_say_so/20070430/1177908375
 別に深い意図はありません。